歯科治療について
犬や猫も人と同じように、年齢とともに歯やお口のトラブルが増えてきます。特に歯周病は非常に多く、3歳以上の犬の80%以上に何らかの歯周病があるとデータがあるほど身近な病気です。歯周病や口内炎は進行すると深刻な問題につながることがあります。
- 口臭やごはんを食べにくそうな症状から始まる
- 進行すると顎の骨折や全身の病気につながる可能性
- 症状が出にくく、多くの犬猫が歯のトラブルを抱えている
「歯の健康は生活の質に直結する」といっても過言ではありません。
だからこそ予防と早期発見がとても大切です。
当院の歯科診療の特長
当院では「できる限り早く異常を見つけ、悪くなる前に予防をすること」を大切にしています。
そのために以下の点を重視しています。
お口の中を丁寧に確認し、わかりやすく状態をご説明します。
健康な子でも3ヶ月に1回程度、定期的に歯科健診をおすすめしています。
スケーリングや抜歯などが必要な場合は、全身麻酔下で安全に処置を行います。その際事前に「今後の計画」や「どの程度歯を残したいか」など希望もお伺いいたします。
歯磨きのやり方やデンタルケア製品の使い方を、その子にとっての最適を飼い主さんと一緒に考えます。
当院の歯科診療の流れ
PROCESS
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01
初診日
・問診票の記入
・診察室にて問診、身体検査(触診、視診、全身状態のチェック含む)
※状態とご希望に応じて、麻酔前検査ではなくデンタルドックの場合もあり
・診断および治療や手術の説明、費用のお伝え
・手術日の決定、注意事項などの共有
・全身麻酔前の術前検査(血液検査、エコー検査、レントゲン検査など)
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02
手術日の流れ
・午前中(9時〜11時)にお預かり、事前に点滴や前投与など
・全身麻酔での検査・治療
口腔内写真撮影、歯周検査、口腔内精査、歯科レントゲン検査、抜歯、スケーリング研磨など
・午後(17時〜19時)に退院(治療内容や各種検査結果のお伝え、今後のケアなどの説明)
※基本的に当日退院 -
03
最再診日(手術から約3−7日後、状態に応じて)
・麻酔後の体調チェック
・口腔内の術後チェック
・個別デンタルケアプランの提案、相談 -
04
経過観察・追加治療
・必要に応じて、定期的にデンタルケアのレッスン(歯磨きなど)を継続
・デンタルケアができる場合は2〜3ヶ月ごとの定期歯科検診 -
05
定期的な口腔内クリーニング(歯垢、歯石除去)などのメンテナンス ※要予約
歯周病の予防には自宅での毎日の歯磨きと、病院での全身麻酔下のケア(人における歯科医院でのクリーニングと同様)の両方がどちらも大切です。 歯周病は3歳以上の80%以上の成犬・成猫がかかるとされる。 他の病気も含めて、これほど多くの犬猫が罹患する病気はありません。 一生涯を通じて、ホームケアとプロケアで愛犬愛猫のお口を守っていく必要があります。 ご家族自身が、歯科医院に年に何回か通われて定期メンテナンスを受けているのと同じです。 日常のホームケアだけではどうしても磨き残しが発生してしまい、少しずつ歯周病リスクが上昇していきます。 良好な口腔環境を維持するには、1回の歯科処置で終わりではなく、生涯を通じたメンテナンス処置が必要です。
歯周病
歯周病とは:
歯の周りの組織(歯周組織)に異常が起こる病気の総称で、歯肉炎と歯周炎という状態のことを言います。歯肉炎とは歯茎に赤みや痛みが出る病気です。歯周炎とは、歯の周りを支える骨(歯槽骨や下顎骨)に赤みや痛みが出る病気で、進行すると骨が溶けてしまうことがあります。どちらも、「歯周病菌」と呼ばれる細菌が原因で起こる細菌による全身の感染症です。
症状:
「口を痛がる」「食欲が落ちる」「口臭が臭う」などの症状が多いです。実に3歳以上の犬の80%以上が何かしらの歯の異常を持っていると言われています。歯周病が進行すると『顎の骨が折れる(下顎骨骨折)』『ほっぺたに穴が開く(外歯瘻)』『血液を介して全身に細菌が回ってしまう(敗血症)』などの症状が出ることがあります。また、歯周病があると歯だけではなく、心臓・腎臓・肝臓など、他の臓器の病気を発症する確率が2-6倍程度、上昇すると言われており、非常に怖い病気の一つです。
診断方法:
肉眼的に歯茎や歯の状態を観察することで診断します。また、レントゲンを撮影することで、歯の根っこ(歯根部)や骨(歯槽骨や下顎骨)の状態を確認することで診断します。
治療:
歯肉炎の場合は、そこに付着している歯垢(食べかすと細菌が固まったもの)や歯石(歯垢とミネラルが固まったもの)を除去することで、治療を行います。歯肉炎は治療を行うことで、改善してくれることが多いです。歯周炎の場合は、骨が溶けてしまっていることが多く、歯を抜く治療が必要になります。
猫の口内炎
猫の口内炎とは:
口の中の粘膜(歯ぐき・舌のまわり・のどの奥)が赤く腫れたり、ただれたりする病気です。単なる「口の中の傷」ではなく、ウイルスや細菌をきっかけに免疫が過剰に反応し、自分の口の中を攻撃してしまう状態になることがあります。痛みや不快感から、ごはんを食べられなくなってしまうことも珍しくありません。原因としては、「カリシウイルスやヘルペスウイルスなどのウイルス感染症」「口腔内細菌の増殖」「免疫の異常反応」「歯周病や歯の吸収病巣」これらの要因が複合的に起こることが多いです。
症状:
口臭が強くなった(生臭い・腐敗臭)よだれが増えた、よだれに血が混じることがある、ドライフードを食べなくなった、食べるときに頭を傾ける、口を前足でこする、急に痩せてきた、などの症状が多いです。
診断方法:
肉眼的に口腔内の粘膜を見ることで診断します。歯肉炎のある粘膜は赤みが強かったり、腫れています。
治療:
猫の口内炎は歯を抜く(抜歯)ことで治療を行います。
奥歯(臼歯)を全て抜く全臼歯抜歯で約70%、全ての歯を抜く全顎抜歯で90%程度が治癒します。
破折
歯の破折とは:
歯が折れてしまい、歯の内部の歯髄が露出してしまう状態です。原因としては硬いものを噛んだときに歯が折れてしまうことが多いです。破折が起こると、歯髄から細菌が入り、その歯の根本で感染症が起こってしまいます。
症状:
「口を痛がる」「食欲が落ちる」「口臭が臭う」などの症状が多いです。硬いものを噛んだ後に起こることが多いので、急に症状が出るのが特徴です。
診断方法:
肉眼的に折れた歯を見ることで診断します。折れた歯は歯髄と呼ばれる部分が見えることが特徴です。
治療:
破折した歯は抜歯をすることで治療します。破折してすぐであれば、レジンと呼ばれる樹脂で折れた部分を修復する治療を行いますが、特殊な機器が必要になるため当院では行なっておりません。また、歯髄を抜いてそこを埋めるような根管治療を行うこともあります。
予防方法
スケーリング
スケーリングとは:
歯の表面や歯ぐきの下についた歯石・歯垢をきれいに取り除く処置です。人と同じように、犬や猫も歯石がたまると歯周病になりやすくなります。スケーリングは、歯周病の症状が出る前に歯をクリーニングして健康な口腔内環境を保つことを目的としています。
メリット・デメリット:
スケーリングのメリットは歯周病の発症を防ぎやすくなる、口臭が軽くなる、痛みや抜歯の必要が出る前に対処できる、心臓や腎臓など全身疾患の発生率を下げることができる、などが挙げられます。デメリットとしては全身麻酔のリスク(特にシニアの犬猫や他の病気がある犬猫)、術後の一過性の痛みや違和感、麻酔コストがかかる、などが挙げられます。また、スケーリングはあくまでも一度、歯についている歯垢や歯石をリセットする処置なので、その後のデンタルケアが不十分だと再度歯石がついてしまいます。
無麻酔スケーリングについて:
当院ではどれだけお利口な犬猫でも、無麻酔スケーリングは行なっておりません。無麻酔スケーリングでは、最も歯垢がつきやすい、歯周ポケットという部分を磨くことができないため、たとえ実施して表面上の歯石が綺麗になっていても実は歯周病が進行してしまいます。
デンタルケア
デンタルケアとは:
犬や猫も人と同じで、歯周病になる前に毎日のデンタルケアで口腔内環境を整えることが重要です。毎日のデンタルケアで歯周病菌を減らすことで将来的な歯周病の発生を予防することができます。
主なケア方法:
歯磨き:
最も有効なケア方法です。物理的に口腔内や歯周ポケット内の歯垢を減らすことができます。初めから歯磨きを実施できる犬猫はほとんどいません。日頃から少しずつ歯磨きに慣れていくようにしましょう。
デンタルペースト:
口の中の細菌を減らす作用のあるデンタルペーストがあります。ペーストは犬猫が美味しい味のものが多いので、これを使用することで楽しくご褒美感覚でデンタルケアを行うことが可能です。歯茎に直接塗ったり、歯磨きの際に歯ブラシにつけて使用することができます。
歯磨きガム:
噛むだけで歯垢の付着を予防できます。ただし、歯磨きに比べると、ケアの効果は非常に弱いです。
歯磨き:
歯磨きの具体的な方法をこちらに示します(将来的に動画埋め込みする)
定期健診のすすめ(頻度の目安)
歯の健康を守るためには悪くなる前に、デンタルケアやスケーリングなどで対策を行うことが重要です。そのため当院では健康な犬猫であっても3ヶ月に1回程度、定期的に口腔内の状態をチェックさせてもらうことを推奨しています。その際に、口腔内の状態、歯磨きの指導、日常のケアなどを詳細にお伝えいたします。歯の健康を守ることは、犬猫が元気に長生きできることに直結します。ぜひ一緒に健康な口腔内環境を目指していきましょう。

