犬アトピー性皮膚炎は適切な治療でここまで良くなる【症例紹介】
サークルどうぶつ病院五条、院長の小川修平です。
普段から診察を行なっていて、とても嬉しい経過を辿ってくれているわんちゃんがいたので紹介をさせてもらいます。
また、犬のアトピー性皮膚炎についても治療内容をまとめましたので、わんちゃんと生活されているご家族は是非ご一読ください。
きっと、こんなに良くなるのか!と驚かれることかと思います!
治療前の状態



これが2025年10月ごろの写真です。
「ずっと体を掻いている」
「薬をやめると、すぐに元通り」
「アトピーだから仕方ないですね」
こうした言葉に、モヤっとした経験はありませんか。
今回は、犬アトピー性皮膚炎とを疑いながらも、適切に治療をすることで皮膚のかゆみと状態がかなり良好に経過している柴犬ちゃんをご紹介します。
症例プロフィール
- 犬種:柴犬
- 年齢:推定13歳
- 性別:女の子(未避妊)
- 主訴:慢性的な痒み、皮膚の赤み、脱毛
これまで病院の受診歴はほとんどなく、皮膚の痒みや赤みがとても強い状態でした。
初診時の状態
初診時、特に強かった症状は
- 顔・耳・四肢端の強い痒み
- 腋窩・腹部の紅斑および苔癬化(痒みが慢性化すると象のような皮膚状態になります)
- 皮膚のバリア機能低下を疑う乾燥とフケ
日中もずっと皮膚を掻いており、わんちゃん自身の生活の質が大きく下がっている状態でした。
診断の考え方
この皮膚の状態を見て、「アトピーですね」で終わらせません。
まず行ったのは、
- 皮膚スタンプスメア検査、抜毛検査、皮膚掻爬検査による外部寄生虫の除外(特にこの皮膚状態と痒みの場所だと疥癬アレルギーによる強い痒みと皮膚状態も疑います)。
- 細菌・マラセチア感染の評価(膿皮症や脂漏性皮膚炎)
- 食事歴の詳細な確認(食事アレルギー性皮膚炎)
それらを一つずつ整理したうえで、
年齢・症状の分布・症状と治療の経過から犬アトピー性皮膚炎と判断しました。
実際に行った治療内容
治療は「1本の薬に頼らない設計」を意識しました。
まずは疥癬アレルギーの可能性を除外するために外部寄生虫の駆除薬を使用しました。
① 炎症とかゆみのコントロール
- 即効性のある抗炎症治療(ステロイド剤の内服薬と外用薬)で、まず「掻かない状態」を作る。
- ステロイド剤は極力使用しない方針ですが、適切なタイミングと量、使用期間を考慮すればやはり強力な薬剤です。
今回の子では炎症が強く生じていたので、アポキルやゼンレリアという痒みを抑える薬だけでは炎症が改善しないと判断しました。 - 今回もバッチリ効いてくれました。
② 皮膚バリアの改善
- 定期的な薬用シャンプー(脱脂作用のある過酸化ベンゾイルが入っているマラセブシャンプーで週2回の薬浴をお伝えしました)
③ 感染の管理
- 二次感染がある部位には適切な抗菌・抗真菌治療を実施する(これも耐性菌の発生を抑えるために内服の抗菌剤、抗真菌剤ではなく、抗菌、抗真菌作用のあるシャンプーでの治療が望ましい)
④ 維持治療への移行
- 症状が落ち着いた段階で、ステロイドやその他の治療薬を漸減していき、最小限の投薬量への調整を実施
「一時的に抑える」ではなく、長期的に安定させることをゴールに設定しました。
治療経過
治療開始から約2週間で、掻く頻度が明らかに減少。


これが治療2週間での経過です!
3ヶ月後には


- 皮膚の赤みは80%程度消失
- 被毛も生えてきた部分がほとんど
- 痒がる頻度もかなり改善
ステロイドも量と回数を減らし今は週に2回程度で維持可能に
飼い主さんからは
「前みたいにずっと掻く姿を見なくなりました」
という言葉をいただきました。
ご家族が自宅で適切なケアをしてくれたのでめっちゃ良い経過です。
現在の状態と今後
現在は、症状を安定してコントロールできている状態を維持しています。
ただし、まだ皮膚の赤みと痒みがゼロになったわけでは無いので、状態に応じて、体全体への副作用が極力少ない方法で維持をしていく予定です。
アトピー性皮膚炎は「完治」を目指す病気ではありません。
ですが、生活に支障が出ないレベルまで抑えることは十分可能です。
まとめ
犬アトピー性皮膚炎は、
- 薬を出して終わり
- 一生我慢する病気
ではありません。
正しい診断と、その子に合った治療設計を行えば、
犬の人生(犬生)は大きく変わります。
同じような症状で悩んでいる方は、一度、治療の組み立てから見直してみてください。
サークルどうぶつ病院五条
院長 小川 修平



