犬のアトピー新薬『ゼンレリア』は何が違う?実際に使用してみて
2024年に犬のアトピー性皮膚炎治療に待望の新薬『ゼンレリア』が登場しました。
先日、専門のセミナーで学んだ最新の知見と実際に当院で使用している子たちの状態をもとに、
お伝えします。
1. なぜ痒くなる?アトピーの裏側で起きている「3つの異常」
アトピーは単なる「肌荒れ」ではありません。
実は、体の中で3つのトラブルが同時に起きています。
- 皮膚バリアの「崩壊」遺伝的に、肌の潤いを保つ「フィラグリン」や脂質が不足しています。そのため、水分が逃げてスカスカの「ドライスキン」に。隙間からアレルゲンや細菌が侵入し放題の状態です。
- 免疫システムの「暴走」体内の免疫バランスが崩れ、炎症(IL-4, IL-13)や激しい痒み(IL-31)を引き起こす物質が過剰に出ています。放っておくと炎症が複雑化し、治りにくくなってしまいます。
- 皮膚の「菌バランスの乱れ」健康な肌には多様な菌がいますが、アトピーの子はブドウ球菌やマラセチアが異常繁殖(ディスバイオーシス)しています。これがさらに炎症を悪化させる悪循環を生んでいます。
2. 期待の新薬「ゼンレリア」vs 定番「アポキル」
これまで主流だった「アポキル」と、新薬「ゼンレリア」。どちらも痒みの伝達(JAK経路)をブロックするお薬ですが、進化したポイントがあります。
| 比較項目 | アポキル | ゼンレリア(新薬) |
| ターゲット | 主にJAK1(痒み中心) | JAK1 + JAK2 |
| 効果の範囲 | 痒みを抑えるのが得意 | 痒み+炎症もしっかり抑える |
| 飲ませ方 | 最初2週間は1日2回必要 | 最初から1日1回でOK |
| リバウンド | 減薬時に痒みが戻ることがある | 1日1回投与で安定しやすい |
ゼンレリアは、空腹時よりも「食事と一緒に」飲ませる方が、成分が体に効率よく吸収(生物学的利用率がアップ)されるそうです!
(メーカーでの報告は差は無いとのことです。)
3. ゼンレリアを選ぶメリット
セミナーを通じて感じたゼンレリアの強みは、「長期的な使いやすさと安全性」です。
- 最初から1日1回で済む: 飼い主さんの負担が少なく、ワンちゃんもストレスが少ないです。
- 炎症もしっかり叩く: 痒みだけでなく、赤みや腫れなどの「炎症」にもJAK2阻害を通じてアプローチできます。
- 安全性が確認されている: 長期使用に関するデータもしっかり報告されており、シニア犬や長く付き合っていく必要がある子にも相談しやすい選択肢です。
4.実際に使用してみての感触
ゼンレリアが発売されてから1年以上経過しまして、実際に使用している犬さんもたくさん経験しております。
やはり、痒みを抑える作用に加えて、少し炎症を起こしている子にも使いやすい薬だと感じています。
炎症を抑えるという意味では、プレドニゾロン(いわゆるステロイド剤)やシクロスポリンという薬も
奏功することが多いですが、長期使用となると、体に生じる副反応も心配な部分です。
一方でゼンレリアについては、
ステロイド剤やシクロスポリンに見られるような
免疫低下や感染症の悪化の可能性は低く(現時点では)
アトピー性皮膚炎の犬だけでなく、アトピーと膿皮症やマラセチア性皮膚炎
が重なっている犬にも使いやすいお薬だと感じています。
その点がとても使いやすいと感じています。
一方で痒みと炎症が治りやすいがゆえに
盲目的にゼンレリア(アポキルもそうですが)を使用されているケースが多いようにも感じます。
皮膚に関してはその子によって何が起こっているか千差万別ですが
根本に起こっている原因を診断し(特に食事アレルギーや先天性の脂漏症など)、「とりあえずゼンレリア」にならないように
外用療法(シャンプーや保湿、塗り薬)や食餌療法(DHA EPAなどの不飽和脂肪酸が含まれた食事やサプリ)
を含めら多角的なアプローチを実施していく必要があると感じています。
ゼンレリアも発売されてまだ間も無いのでこれからわかってくることも多いので
今後も最新の情報や論文などをキャッチして
皆様に最善の治療を提供できるように尽力いたします。
サークルどうぶつ病院五条
院長 小川 修平


