【獣医師解説】マダニが運ぶ恐怖の寄生虫「バベシア症」とは?

こんにちは。 サークルどうぶつ病院五条 院長 小川修平です。

「ノミ・マダニ・フィラリア予防シリーズ」、今回のテーマは「バベシア症」です。
「バベシア」という言葉、聞き馴染みのない方も多いかもしれませんが、
実はワンちゃんにとって命に関わるほど重い貧血を引き起こす、非常に怖い感染症です。

愛犬を守るための正しい知識を身につけましょう。


バベシア症ってどんな病気?

バベシアは、マダニが血を吸う際に犬の体内へ送り込まれる「原虫(目に見えない小さな寄生虫)」です。日本で特に問題となるのは以下の2種類です。

  • Babesia gibsoni(小型): 西日本を中心に全国で見られます。赤血球の中に「印環(指輪)」のような形で寄生します。
  • Babesia canis(大型): かつては沖縄限定と思われていましたが、近年では青森、奈良、広島、大分などでも検出されており、感染域が拡大しています。

Babesia gibsoniが赤血球に感染している写真(緑書房 CAPより引用)

なぜ怖いの?(病態)

バベシアが赤血球の中に住み着くと、赤血球を次々と破壊してしまいます。
これを「溶血性貧血」と呼びます。酸素を運ぶ赤血球が足りなくなるだけでなく、血を止める役割の「血小板」が減ってしまうこともあります。


どうやって感染するの?

主な感染ルートは「マダニによる吸血」です。

  • 吸血後48時間が勝負: バベシアが犬の体内に入るには、マダニが少なくとも2日間吸血し続ける必要があります。
    つまり、その前にマダニを駆除できれば感染を防げるのです。
  • その他のルート: 感染している母犬からの胎盤感染や、バベシア陽性の犬からの輸血でも感染するリスクがあります。

こんな症状に注意!

症状は、急激に悪化するものから、じわじわと続く慢性的なものまで様々です。

  • 急な症状: 激しい貧血、発熱、食欲がない、脾臓(お腹の臓器)が腫れる。
  • 慢性の症状: 軽い貧血、口の中の粘膜が白っぽい、リンパ節の腫れ、なんとなく元気がない。

※注意が必要な病気:IMHA 自分の免疫が赤血球を壊してしまう「免疫介在性溶血性貧血(IMHA)」という病気と症状がそっくりです。IMHAを疑う際には、必ずバベシアが隠れていないかをチェックする必要があります。逆も然りです。


診断と治療について

検査

顕微鏡で赤血球の中に虫体を見つけるほか、精度の高い遺伝子検査(PCR検査)を行って確定診断を下します。

治療

お薬(内服薬)を使って治療します。

  • ジミナゼンアセチュレート →即効性あり/重篤な副作用の可能性
  • アトバコン →即効性あり、副作用なし/再発あり、再発時の治療反応低下
  • クリンダマイシン/メトロニダゾール/ドキシサイクリンの併用 →初期の治療効果は低い、輸血の必要性あり

などの治療法があります。


一生付き合っていく可能性があり

副作用を回避し治療ができれば、寿命を全うできるケースがほとんどです。
しかし、一度感染したバベシアを体の中から完全に消し去ることはできません。

生涯にわたって再発のリスクを抱えることになるため、以下の管理が重要になります。

  • 過度なストレスを避ける
  • 免疫抑制剤の使用には注意を払う
  • 脾臓を摘出しない

最大の対策は「1年中のマダニ予防」

バベシア症は、マダニ予防さえしっかりしていれば防げる病気です。

マダニは春や夏だけでなく、冬場でも草むらなどに潜んでいます。「冬だから大丈夫」と油断せず、通年での予防薬の使用を強く推奨します。

一度感染するとめっちゃ厄介なバベシア症。
愛犬が辛い思いをしないよう、今日からしっかりと予防を始めましょう!


サークルどうぶつ病院五条
院長 小川修平