乳歯遺残が引き起こすリスクと抜歯の重要性
サークルどうぶつ病院五条です。
ワンちゃんの歯が生え変わる生後4〜7ヶ月ごろ、「新しい歯が生えてきたのに、古い歯(乳歯)が抜けない」という状態を見かけませんか?
これは「乳歯遺残(晩期残存乳歯)」と呼ばれ、放っておくと将来のお口の健康に深刻なダメージを与えます。
今回は、なぜ早期の抜歯が必要なのか、その医学的な理由と「予防矯正」の考え方について解説します。
1. 放置は禁物!「75%」の確率で不正咬合に
乳歯が残ったまま永久歯が生えてくると、永久歯は本来の位置からズレて生えるしかありません。
驚きのデータ:
晩期残存乳犬歯(牙の乳歯)を放置した場合、約75%の確率で永久犬歯の不正咬合(噛み合わせの異常)が起こるとされています。
不正咬合になると、歯が歯茎に刺さって痛みが出たり、重度の歯周病の原因になったりと、ワンちゃんの一生を左右するトラブルに繋がります。
2. 抜歯は立派な「矯正治療」です
「たかが抜歯」と思われがちですが、適切な時期に乳歯を抜くことは、立派な矯正治療(予防矯正・抑制矯正)の一環です。
- 予防矯正: 将来起こると予測される不正咬合を未然に防ぐために行います。
- 抑制矯正: すでに不正咬合の兆候がある場合、その原因(乳歯)を取り除くことで、永久歯が自力で正しい位置へ戻るよう促します。
これらは、永久歯の根っこが完成してしまう前に行う必要があり、生後4〜6ヶ月齢という非常に限られた期間が重要となります。
3. 【チェックリスト】抜歯を検討すべきタイミング
犬種や個体差はありますが、以下の「乳歯と永久歯の共存期間」を目安にしてください。
これを超えて残っている場合は、速やかな抜歯が推奨されます。
| 歯の種類 | 共存して良い期間 | 抜歯のタイミング |
| 切歯(前歯) | ほぼ0日 | 見つけたらすぐ(予防矯正の適応) |
| 臼歯(奥歯) | ほぼ0日 | 見つけたらすぐ |
| 上顎の犬歯 | 1〜3週間 | 期間を過ぎても抜けない場合 |
| 下顎の犬歯 | 0〜2週間 | 期間を過ぎても抜けない場合 |
※不正咬合に関与していない場所であっても、残っている乳歯は発見したときが抜歯の適応となります。
4. 早期抜歯で得られるメリット
適切な時期(4〜6ヶ月齢)に処置を行うことで、以下のような劇的な改善が見込める場合があります。
- ケースA(犬歯): 下顎の永久歯が内側に生え始めていたが、乳歯を抜いたことで1週間後には正しい位置へ誘導された。
- ケースB(切歯): 永久歯がズレて生えていたが、乳歯の抜歯により噛み合わせが改善した。
切歯(前歯)は犬歯よりも早く歯根が閉まってしまうため、「もう少し待てば抜けるかも」という迷いが、矯正のチャンスを逃すことにもなりかねません。
5. まとめ:飼い主さんにしかできない「観察」
乳歯遺残は、猫ではあまり見られませんが、犬(特に小型犬)では非常に多く見られるトラブルです。
- 4〜6ヶ月齢の時期は、毎日お口の中をチェックしましょう。
- 「二重に生えている」「永久歯が変な方向を向いている」と感じたら、すぐに動物病院へ。
- 去勢・避妊手術を予定している場合は、手術時にまとめて抜歯を行うのが一般的ですが、歯並びの状況によっては手術を待たずに抜歯すべきケースもあります。
愛犬が一生自分の歯でおいしくご飯を食べられるよう、この大切な時期を見逃さないようにしてあげてくださいね
サークルどうぶつ病院五条


