猫ちゃんと一緒に暮らすことは、とても豊かなことです。愛らしい姿や凛とした姿、見た目の美しさ、体のしなやかさ。日々の暮らしの中で、そうした魅力を感じる場面がたくさんあります。
一緒に暮らすことで新しい気づきも多く、そっと寄り添ってくれる存在にとても癒されます。
猫ちゃんはのんびり暮らしている子が多く、その様子を見ていると人の心も穏やかになります。忙しい現代社会の中で、こうした存在が身近にいることは、本当に大切なものは何かに気づかせてくれます。
この記事では、猫ちゃんを迎えるとどんな生活になるのか、猫ちゃんも人も幸せに暮らすために何に気をつければよいのか、迎えた直後にはどんな健康状態に注意すればよいのか、そもそも猫とはどんな動物なのかをまとめました。迎える前に知っておいていただければうれしいです。
1. 猫ちゃんの寿命と、完全室内飼いのすすめ
最近の猫ちゃんの平均寿命は16歳ほどといわれています。これは完全室内飼いの猫ちゃんの数字で、外に出る子は少し短くなるといわれています。
寿命が延びている主な理由は次の3つです。
- 以前は治せなかった病気が、治せるようになったこと
- フードの改良が進み、栄養バランスのよい食事をあげられるようになったこと
- 昔は半分を外で過ごす猫ちゃんもいましたが、完全室内で暮らす猫ちゃんが増えたこと
完全室内飼いをおすすめする理由
私たちは完全室内飼いをおすすめしています。外が好きな猫ちゃんもいますが、外に出ると次のようなリスクがあるからです。
- ノミやマダニへの感染
- ほかの猫から、猫エイズや猫白血病などの感染症をうつされる
- 真菌やウイルスなどの病原体への感染
- 交通事故
- そのまま帰ってこなくなる
健康寿命を延ばすという意味では、完全に室内で暮らしてもらうのが一番です。
室内でも「猫らしい暮らし」を
猫ちゃんは本来、狩りをしたり、高いところに登ったり、獲物や外の景色を眺めたりして暮らす動物です。外に出さない場合でも、こうした習慣をお家の中でかなえてあげることがとても大切です。
たとえば、外の鳥が見える高い場所をつくる、上下左右に運動できるスペースをつくるなど、猫ちゃんが退屈しない環境づくりを工夫してあげてください。
迎えた後の暮らしを見すえて
- 引っ越しや転勤:お家が変わることは、猫ちゃんにとって大きなストレスです。引っ越し先でも猫ちゃんが楽しく過ごせる環境を用意できるか、転勤先で猫ちゃんを飼えるかなど、先を見すえた生活スタイルを考えておきましょう。
- ご高齢の方が迎える場合:万が一のときに、次にその子を迎えてくれる方を探しておくなどの備えが必要です。
アレルギーの確認はとても大事
実は私自身、猫ちゃんを迎えてから自分に猫アレルギーがあることに気づきました。
私は軽度の症状なので一緒に暮らすことはできますが、猫ちゃんに顔をうずめると目が真っ赤になってしまいます。
ご家族に重度の猫アレルギーの方がいないか、アレルギーがあっても許容できる範囲かどうかを、事前に確認しておくとより安心です。最近は、アレルギーの原因となる物質を減らせるキャットフードもあり、アレルギーのある方でも猫ちゃんを迎えやすくなっています。
2. 猫種と迎え先の選び方
迎え先
昔は、外で暮らす猫が産んだ子猫を拾って迎えるケースが多くありました。最近は、ペットショップやブリーダーから純血種の子を迎える方が増えています。また、地域猫活動をされている方々の努力もあり、外で子猫がたくさん生まれる状況は減ってきています。
そのため今は、ペットショップ、ブリーダー、保護施設、譲渡会から迎えることが多くなっています。
- 純血種の猫ちゃんを迎えたい方:ペットショップやブリーダーから迎えるのがよいと思います。
- 雑種の猫ちゃんを迎えたい方:保護施設や譲渡会から迎えるのがおすすめです。保護施設や譲渡会には成猫も多いので、ある程度性格がわかったうえで迎えられるのがよいところです。
猫種ごとの性格とかかりやすい病気
猫種によって、性格やかかりやすい病気はかなり違います。活発な子が多い猫種もあれば、慎重な子が多い猫種もあります。
たとえば日本で人気のマンチカンやアメリカンカールは、関節や耳の病気になりやすいことがあります。また純血種の中には、メインクーンやアメリカンショートヘアーなど心臓病が多い猫種もいます。迎える前に、その猫種の特徴を把握しておくことが大事です。
長毛種と短毛種
長毛の子はブラッシングが必須です。ブラッシングをしないと毛玉ができてしまい、バリカンで刈らなければならないほど毛玉だらけになって、皮膚が不衛生になることもあります。
多頭飼いを考えている場合
兄弟などで一緒に迎えると、新しいお家でも一緒に遊んだり寄り添って寝たりして、ストレスが少なく過ごせます。猫ちゃん同士の暮らしも豊かになるのでおすすめです。
ただし多頭飼いでは、次の点に注意が必要です。
- それぞれの子の性格の折り合いが合うか
- それぞれの子がゆっくりできる場所があるか
- ごはんを取り合っていないか
- どちらかの子が痩せたり、太ったりしていないか
3. 猫ちゃんにかかる費用
迎えるときにかかるもの
- ケージ、トイレ、爪とぎ、移動用のキャリーなど
日常的にかかるもの
- フード
- 猫砂やペットシーツなどのトイレ用品
予防・ケアにかかるもの
- ワクチン(1年に1回、または3年に1回)
- 避妊・去勢手術(生後6ヶ月程度で実施)
- ノミ・マダニの予防薬
- 健康診断
- ペット保険料(加入する場合)
そのほかに考えておきたいもの
- 病気やけがの診療費:軽い症状なら数千円のこともありますが、重い症状でたくさんの検査が必要な場合は数万円、高度な検査や手術では数十万円かかることもあります。
- 旅行やお出かけのときに預けるペットホテル代や、ペットシッター代
4. 迎えるときの手続き
ペットショップやブリーダーから迎えた子だけでなく、譲渡会や保護施設から迎えた子でも、マイクロチップが入っている場合は、登録情報の変更が必要です。
5. 迎えてすぐの時期に大切なこと
新しい環境に慣れてもらう
子猫は比較的すぐに慣れますが、譲渡会や保護施設から迎えた子は、新しい環境に慣れるまで時間がかかることがあります。
慣れるまでは、怖がらせることをしないのが一番です。新しい環境で知らない人が積極的に関わってくると、猫ちゃんは恐怖を感じて心を開いてくれなくなります。
まずは、安心してごはんを食べられる、安心してトイレができるなど、怖がらずに過ごせる環境を用意してあげましょう。そのうえで、おもちゃなどで少しずつ遊びながら距離を縮めていきます。猫ちゃんのほうから近づいてきてくれるのを待つことが大事です。
この時期に多いトラブル
- 環境の変化による下痢や嘔吐
- 猫風邪:特に子猫では、鼻炎、結膜炎、気管支炎など呼吸器の病気がよく起こります。
- 誤食:猫ちゃんはひも状のものや、かみ心地のよいものが好きです。おもちゃや、ウレタンマットを飲み込んで腸閉塞になるケースがとても多いです。
ごはんの進め方
初めは、ペットショップなど迎える前の場所で食べていたごはんから始めます。その後、食べさせたいフードに少しずつ切り替えていきましょう。
猫ちゃんはとても水分不足になりやすく、それが原因の腎臓病が多いといわれています。水分をしっかりとってもらうために、次のような工夫をしてみてください。
- ウェットフードを混ぜる
- ドライフードをふやかす
- 飲み水に出汁をとるなどして、猫ちゃんの好きな味にする
- 飲水量を増やすための製品を取り入れる
先住の猫ちゃん・ワンちゃんがいる場合
とにかく、先にいる子を優先してあげることが大事です。新しい子が来たことで先住の子にストレスがかからないよう、新しい子はしばらくキャリーやケージの中で過ごしてもらいましょう。そのうえで、先住の子に少しずつ新しい子の存在を認識してもらいます。
6. 毎日のお世話
食事と水分
猫ちゃんは「1日2回」「1日3回」と決まった時間に食べるとは限りません。1日分を入れておくと、食べたいときに少しずつ食べる子が多いです。これは「猫食い」と呼ばれ、外で暮らしていたころの食べ方の名残です。
肥満も痩せすぎもよくありません。まずはフードに書かれている目安量をあげて、体重の増え方・減り方を見ながら量を調整していきます。
お水はいつも新鮮なものを用意し、1日2回は替えてあげてください。また、1日にどれくらい水を飲んでいるかは、健康状態を知るうえでとても大切です。実際に量を測る、あるいは「いつもより少ない・多い」と気づけるように、普段の飲む量を把握しておきましょう。
トイレ
- 数:猫ちゃん1匹なら、1〜2個置くのがよいです。
- 大きさ:猫ちゃんの体長の1.5倍ほどの大きさが目安です。
- 猫砂:ふかふかに、トイレの底が見えないくらいたっぷり入れます。
- 置き場所:落ち着いて用を足せる場所に置きます。
- 掃除:猫ちゃんはきれい好きな子が多く、おしっこやうんちが残っているとトイレをしなくなり、膀胱炎になることがあります。汚れに気づいたら、すぐに掃除してください。
爪とぎ・爪切り
爪とぎには、立てかけるタイプや床に置くタイプなどがあります。好みは子によって違うので、いろいろ試してみてください。
爪切りは、小さいころから指を触られることに慣らしておきましょう。1回に1本ずつでかまわないので、嫌がらずに切らせてくれるよう少しずつ慣らしていきます。爪切りは、ギロチン型がおすすめです。切りやすく、爪の断面を見ながら出血しないように切れます。
ブラッシング
長毛の子は、特に毎日ブラッシングをしてください。短毛の子でもブラッシングが好きな子はとても多いです。金属製のスリッカーブラシや、豚毛のやさしいブラシなど、いろいろ試してみてください。
歯みがき
猫ちゃんにとっても歯みがきはとても重要で、毎日行うのが理想です。
- 初めは嫌がるので、まずは口を触ることから慣らします。
- 慣れてきたら、指で口を触ったり、歯みがきペーストやジェルを塗ったりして、デンタルケアを始めます。
- それができるようになったら、歯ブラシで磨いてあげます。
猫ちゃんの場合、歯垢(食べかす)が固まって歯石になるまで7日ほどかかるといわれています。毎日が難しい方でも、週に2〜3回続ければ、歯周病になる確率をかなり下げられます。
遊びと運動
猫ちゃんはとても身体能力が高い動物です。横に走るだけでなく、上下に動いたり家具の上に登ったりと、縦横無尽に動ける環境をつくってあげてください。
キャットタワーを必ず置く必要はありません。腰壁に登れて、そこから冷蔵庫の上に移れるなど、お家にあるものでも上下に移動できる場所はつくれます。窓の外を眺められる場所があると、外の景色や鳥を見て、猫ちゃんらしい暮らしができます。
遊びには、猫じゃらしや、目に入っても安全なレーザーポインター、ひも付きのおもちゃなど、猫ちゃんの興味を引くものを使って、何かを追いかけさせてあげましょう。誤食しないよう、遊び終わったらおもちゃは必ずしまってください。
室内の安全対策と脱走防止
- 誤食の予防:飲み込みそうなものは片づけておきます。
- 脱走防止:特にベランダや玄関ドアから出てしまうことがあります。そこに近づけないようにしておきましょう。
- ベランダからの落下:猫ちゃんは家の中の上下運動で骨折することは少ないのですが、高いところから飛び降りることがあり、ベランダから落ちて骨折するケースがあります。ベランダには特に出ないよう気をつけてください。
7. 健康管理と動物病院
猫ちゃんは不調を隠す動物
猫ちゃんは、体の不調をとても隠しやすい動物です。もともと外で暮らしていたため、弱っていることが知られると、ほかの動物に襲われてしまうからです。
そのため、猫ちゃんがしんどそうな様子を見せるときには、病気がかなり進んでいることがあります。「少ししんどそうかな」という違和感だけでもかまいません。病院に連れて行ってください。
なんとなく痩せてきた、毛づやが悪くなってきた、筋肉が落ちてきた気がする、食欲が少し落ちている。こうした軽い異常でも、すぐに受診してください。シニアの猫ちゃんには、甲状腺の病気のように、元気そうに見えても痩せていく病気もあります。とにかく、小さな変化でもすぐに病院へ行ってください。
迎えたら、まず健康診断を
迎えたら、できるだけ早く動物病院で次のようなチェックを受けてください。
- 全身の健康状態
- ノミやマダニがついていないか
- お腹に寄生虫がいないか
- 生まれつきの病気がないか
かかりつけ病院の選び方
通いやすさや料金ももちろん大切ですが、次のような点も見て選ぶとよいです。
- しっかり診察してくれるか
- 猫ちゃんにやさしい診察をしているか
- 親身に相談に乗ってくれるか
ご自宅でのチェックポイント
- 元気、食欲はあるか
- 下痢や嘔吐はないか
- うんちは出ているか、便秘はないか
- 飲水量、おしっこの量や回数は変わっていないか
- 呼吸が速くないか
- 高いところに登れなくなっていないか
- 痛がっていないか
猫ちゃんに多い病気
- 腎臓病:シニアになるととても多くなります。日ごろから飲水量を確保すること、ごはんをその子のライフステージに合わせて変えていくことが大切です。
- 関節炎や糖尿病:肥満の猫ちゃんで多くなります。
- がん:とても多くなっていますが、早期に見つかれば完治が見込めるものもあります。
動物病院に行く頻度の目安
病気になる前に気づくこと、早期に発見することがとても大切です。病気がなくても、定期的に通院しましょう。
| 時期 | 頻度の目安 |
|---|---|
| 子猫(キトン)期 | 最低でも月に1回 |
| 成猫になってから | 病気がなくても3か月に1回程度 |
病院では、体重が減っていないか、脱水していないか、心臓に雑音がないかなど、身体検査でわかることをチェックしてもらってください。
通院のストレスを減らす工夫
通院がストレスで病院に連れて来られない、という猫ちゃんは少なくありません。次のような工夫を試してみてください。
- キャリーに慣らす:日ごろからキャリーに入る練習をしておきます。キャリーの中でごはんやおやつを食べる機会をつくり、「キャリー=リラックスできる場所」と覚えてもらいましょう。
- 洗濯ネットに入れる:通院のときに洗濯ネットに入れると、落ち着く子もいます。
- 視線をさえぎる:キャリーにブランケットをかけて、外が見えないようにします。
- フェロモン剤を使う:猫ちゃんがリラックスするフェロモン剤を、好きなブランケットやキャリーの中に吹きかけておきます。
- お薬を使う:どうしてもストレスが強い子は、病院に来る2時間ほど前に、不安をやわらげるお薬を飲んでから通院してもらうこともあります。
まとめ
猫ちゃんとの暮らしは本当に楽しく、たくさんの気づきをもらえる、かけがえのないものです。だからこそ、できる限り健康に、長く一緒に暮らしてほしいと願っています。
獣医師として、そして一人の猫の飼い主としてもそう思っています。今回お伝えしたことを、ぜひ参考にしてください。

