ワンちゃんとの生活は、とても豊かなものです。
犬はただ愛らしいだけの存在ではありません。時にそっと寄り添い、時に新しい気づきを与えてくれ、しんどい時も楽しい時も常にそばで愛情を注いでくれる、最良のパートナーです。
一方で、飼ってみて初めて気づくことや「思ったよりここが大変」ということもあります。この記事では、そうしたポイントを事前に知っていただき、ワンちゃんとの生活を最大限幸せに、そして健康に送っていただくための情報をまとめました。
1. ワンちゃんの寿命は延びている:15年の暮らしを想定して
ワンちゃんの平均寿命は年々延びています。主な理由は次の3つです。
- 予防医療の発達:かつて多くのワンちゃんの命を縮めていたのが、蚊に刺されて感染するフィラリア症でした。予防医療が発達し、フィラリア症で亡くなる子はとても減りました。
- 病気の早期発見:健康診断が少しずつ広まり、病気を早く見つけて治療できるようになりました。
- 獣医療のレベル向上:昔は治らなかった病気に新しい治療法が確立され、獣医療全体の質も底上げされています。
日本で多い小型犬種の平均寿命は15歳前後といわれ、最近は20歳近くまで長生きする子も増えています。迎えるときは「15年ほど一緒に暮らす」と考えておいてください。
15年の間には、ご自身やご家族のライフステージも大きく変わります。迎えた後の生活環境について、一度考えてみましょう。
- 引っ越しや転勤があっても、ワンちゃんと暮らせる住まいを選べるか
- ご高齢の方が迎える場合、万が一のときにワンちゃんを引き受けてくれる人がいるか
また意外と多いのが、迎えてからお子さんの犬アレルギーがわかるケースです。保護施設などでトライアル(お試し飼育)ができる場合は、その期間にアレルギーの有無も確認しておくと安心です。
2. 犬種と迎え先の選び方
見た目のかわいらしさはもちろん大切ですが、それだけでなく次の観点でも考えてみてください。
- その犬種がかかりやすい病気
- 性格や気質
- 住まいの広さ(大型犬を迎えられる家かどうか)
- 近くにたくさんお散歩できる場所があるか
犬種によって、かかりやすい病気は変わります。たとえば小型犬種は歯石が溜まりやすく歯周病になりやすいため、デンタルケアを入念に行うことが大切です。鼻の短い短頭種(いわゆる「鼻ペチャ」さん)は、呼吸器の病気になりやすい傾向があります。迎える前に、その子がなりやすい病気を調べておきましょう。
迎え先には、ペットショップ、ブリーダー、保護施設があります。おすすめは、保護施設からお迎えすることです。ペットショップやブリーダーから迎える場合は、次の点も判断材料にしてください。
- その時点での健康状態
- 兄弟犬と一緒に過ごし、社会化ができているか
3. 生活にかかる費用
ワンちゃんを迎えるときだけでなく、その後も毎日・毎年かかる費用があります。
迎えるときにかかるもの
- ケージ・サークル、ベッド、トイレ用品、食器、ハーネス、リード、キャリー
- ワクチン接種、健康診断、狂犬病予防注射
- 子犬の場合は避妊手術・去勢手術
日常的にかかるもの
- フード、おやつ、ペットシーツ
毎年の予防・ケアにかかるもの
- ワクチン
- フィラリアやノミ・マダニなど、寄生虫や感染症から身を守るお薬
- 健康診断
- トリミング(シャンプーやカットが必要な子の場合)
- ペット保険料(加入する場合)
そのほかに考えておきたいもの
- 病気やけがの診療費:症状によりますが、動物病院では1回あたり5,000円ほどから、詳しい検査をすると1回で数万円かかることもあります。
- 旅行などで預けるときのペットホテル代やペットシッター代
4. 迎えるときの手続き
- 市区町村での登録:お住まいの市区町村で、ワンちゃんの登録をします。
- 狂犬病予防注射:法律で年1回の接種が義務づけられています。接種した後は、市区町村への届け出も必要です。
- マイクロチップ:装着が義務になっており、最近はペットショップやブリーダーで装着済みの子がほとんどです。登録情報をご自身の名前に変更する手続きは、ペットショップやブリーダーから案内される場合と、ご自身で行う場合があります。
引っ越すときにも届け出が必要です。詳しい手続きは、お住まいの市区町村にご確認ください。
5. 迎えてすぐの時期に大切なこと
お迎えした直後のワンちゃんは、環境が大きく変わって緊張しています。最初の数日〜数週間は、新しい家に安心して慣れてもらうことを一番に考えましょう。
この時期に多いトラブル
- 環境の変化や感染症による下痢や嘔吐
- ケンネルコフという呼吸器の感染症
- お家の中の、食べてはいけないものを食べてしまう(誤食)
- 電気コードをかんで感電してしまう
- 小型犬の場合、抱っこから落下して前足を骨折してしまう
特にこのあたりに注意して、様子を見てあげてください。
ごはんの進め方
しばらくは、今まで食べていたものと同じごはんをあげるのが無難です。新しく食べさせたいフードに変える場合は、1〜2週間かけて少しずつ切り替えていきましょう。
子犬のうちは、自分で十分に水分をとるのが難しかったり、乳歯の状態ではドライフードを食べにくかったりすることもあります。初めはウェットタイプのフードや、ふやかしたごはんをあげてください。生後4〜5か月と成長するにつれて、ドライフードだけに切り替えていってもかまいません。
ただ、ウェットフードや手作りごはん、ふやかしたごはんには、食事からしっかり水分をとれるというメリットがあります。そのまま続けて食べさせても大丈夫です。
6. 毎日のお世話とトレーニング
どんな生活をするか、何を食べるか、どれくらい運動するか、どれくらいお手入れをするか。こうした毎日の積み重ねで、ワンちゃんが心も体も健康に暮らせるかが変わってきます。
食事
その子に合ったものを選びます。基本は、栄養バランスの整った「総合栄養食」のドライフードです。ウェットフードを混ぜる子もいますし、手作りごはんをあげる方もいらっしゃいます。
お散歩
お散歩は基本的に必要です。外が少し苦手な子や、長時間歩かなくても少し外を歩くだけで満足してくれる子もいます。それでも、日光を浴びる、外のにおいをかぐ、ほかのワンちゃんとふれあうといった刺激は、ワンちゃんの健康にとても大切です。
お手入れ
日常的なブラッシングで被毛の健康を保ち、爪切り、そして特に大事な歯みがきを習慣にしましょう。将来の歯周病を予防できるうえ、体の表面にできものがないか、かゆがっていないかなど、体の異変にも早く気づけます。
トイレ
ご自宅でトイレをする場合は、シートをこまめに替えて清潔に保ちます。
トレーニング
トレーニングは、家に来たその日から始まります。悪いことをしたときに叱るよりも、お利口にできたときや上手にできたときに、すぐに心から褒めることが基本です。
ご家族の中でトレーニングの方針を決めて、一貫性を持たせることも大切です。
特に子犬(パピー)期のトレーニングは重要です。いろいろな刺激に慣れているか、歯みがきができるか、落ち着いて生活できるかは、この時期に大きく左右されます。パピーのうちに、たくさん練習しておきましょう。
7. 健康管理と動物病院
ワンちゃんは言葉を話せないので、しんどいときもそれを伝えることができません。だからこそ、ご家族が日ごろの様子をしっかり見て、異変に早く気づき、動物病院に相談することがとても大切です。
「1か月前から少し調子が悪いと思っていた」「2週間ほど調子が悪そうだった」と来院される方もいらっしゃいます。もっと早く連れてきていただければ、もっと早く健康な状態に戻せたというケースも少なくありません。気になることがあれば、早めに相談する心構えでいてください。
迎えたら、まず健康診断を
ワンちゃんを迎えたら、なるべく早く動物病院で一度健康診断を受けてください。
かかりつけ病院の選び方
- 自宅から通いやすいこと(いちばん大事です)
- しっかり身体検査をして、丁寧に診てくれるか
- 最新の治療を行っているか
- 先生が親身になって、いろいろな相談に乗ってくれるか
ご自宅でのチェックポイント
日ごろから、次のような変化がないか見てあげてください。
- 元気、食欲はあるか
- 下痢や便秘をしていないか、吐いていないか
- 飲む水の量やおしっこの量が変わっていないか
- おしっこの回数が多くないか
- 体をかゆがっていないか
- 咳をしていないか、呼吸が速くないか
- 歩き方がおかしくないか、痛がっていないか
動物病院に行く頻度の目安
理想は、病気になったときだけ行くのではなく、病気になる前から定期的にチェックすることです。
| 時期・内容 | 頻度の目安 |
|---|---|
| 子犬(パピー)期 | 最低でも月に1回 |
| 1歳以降 | 狂犬病予防注射・ワクチン・ノミダニやフィラリアの予防に加えて、何もなくても1〜3か月に1回程度 |
| 精密な健康診断(血液検査、レントゲン検査、エコー検査、尿検査など) | 最低でも年1回。年齢に応じて半年に1回、3か月に1回と増やす |
年1回の健康診断は、人間でいえば4年に1回健康診断を受けているようなイメージです。年齢に合わせて、検査の頻度を増やしていくことが大切です。
まとめ
ワンちゃんとの暮らしは、15年ほど続く長い時間です。寿命、犬種選び、費用、手続き、毎日のお世話、健康管理のことを事前に知っておけば、飼ってから慌てることも少なくなります。
しんどい時も楽しい時もそばにいてくれるワンちゃんと、できるだけ長く、幸せで健康な毎日を過ごせますように。気になることがあれば、いつでも動物病院に相談してください。

